なみなみ通信Vol.27

海況情報

 水温は、筑前海沖合部では10月、沿岸部では11月がともに高め、有明海では9、10月がやや高め、豊前海では10月が高め、12月が低めで推移しました。


”豊前海一粒かき”の生産状況

 本年も例年どおり3〜4月から各漁場で養殖が開始(種ガキの垂下)されました。漁期当初は、競合するムラサキイガイの付着が少なく、穏やかな天候に恵まれたため、全域においてカキの成長は良好で、順調に経過しました。夏期の台風についても、昨年度は相次いで豊前海を直撃したため養殖イカダに大規模な被害をもたらしましたが、今年度は9月上旬に1度の直撃だけで、比較的軽度の被害で乗り切ることが出来ました。
 しかしながら、いよいよカキの出荷が開始される10月中旬以降、主要生産地である新北九州空港周辺漁場を中心にへい死が始まり、11月下旬には生残率が50%以下となったイカダもみられました。
 へい死の発生原因は特定されていませんが、カキの実入りが増す、10月以降の水温が平年と比較して高めであったため、活性の回復が困難であったことが考えられます。
 現在では水温の低下とともに、カキの活性は充分に回復しています。身入りの状況も素晴らしく、「海のミルク」と呼ばれるグリコーゲンがたっぷりの美味しい「豊前海一粒かき」が収穫されており、宅配等の出荷盛期を迎えています。

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カキ殻表面の清掃

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宅配用「豊前海一粒かき」


(豊前海研究所 浅海増殖課)

 


有明海ノリ養殖状況(12月中旬まで)

 今年度の採苗は、10月6日に始まりました。しかし、高水温の影響により芽付きが悪く、採苗終了までに日数を要しました。その後の生長も平年に比べやや遅れ気味で、近年にない不調となりました。
 9月中旬以降まとまった降雨がなかったため、10月下旬からは栄養塩が極端に減少して、ノリの色落ちが始まり、今年度の生産が危ぶまれる状況でした。しかし、11月3日からの松原・下筌ダムの緊急放流や11月5日からの降雨等により、11月7日以降、栄養塩も十分な量に回復しました。
 あかぐされ病は、11月5日に初認されましたが、適切な干出等の網管理が功を奏し、大きな被害には至りませんでした。採苗で芽付きが少なかったことも、結果的には病気の蔓延を防止できた要因と考えられます。
また、あかぐされ病防止のために高吊り管理を行ったため、質的には赤みの多いものも見受けられましたが「味のある」ノリの生産につながったという声も聞かれました。
 秋芽網の共販は、1回目が11月24・25日、2回目が12月6 ・7日に行われ、これまでの累計では、枚数・金額とも昨年度及び過去5年平均を上回り、今年度の生産は採苗等には苦労したものの、順調な滑り出しとなりました。
 冷凍網は12月11日に張り込まれ、21日頃から摘採が始まりました。
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(有明海研究所 のり養殖課)


間伐材を使った試験魚礁について

 魚礁の素材としては従来からコンクリートや鋼材が使われてきましたが、近年林業で問題になっている杉の間伐材を木製魚礁として有効利用する技術開発が求められています。そこで、平成14年2月23日に奈多地先に杉の間伐材を用いた2種類の試験魚礁を設置しました。

 設置後調査を行ったところ、わずか約1ヶ月後(26日後)には魚礁1 型に数百尾のメバルなどが蝟集していました。しかも、メバルは設置後3年以上経過した現在でも多数分布しています。従来の魚礁の場合、一般的には魚類の蝟集に数ヶ月以上かかりますが、間伐材を使えば早期の蝟集効果が期待できます。しかし、間伐材はフナクイムシ(2枚貝の仲間)の食害を受け、全体の2〜3割程度が消失しています。今後は耐久性や蝟集効果について更に詳しく調査を進めていきます。

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魚礁1型(鉄枠の棚に間伐材)

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魚礁2型(鉄及びコンクリート枠に間伐材)

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蝟集したメバル(魚礁2型 設置後2年半経過)

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フナクイムシの食害を受けた間伐材
(穴はフナクイムシの棲管)

(研究部 漁業資源課)


オイカワ(ハヤ)の資源回復への取り組み

 ハヤは、筑後地方では特産品の甘露煮などで重用されている重要な淡水魚ですが、近年その資源量は減少し、漁業者はその原料を確保するのに困っている現状があります。そこで、内水面研究所では昨年からハヤ資源を回復させるため産卵場を作ったり(「産卵場造成技術開発」)、資源を増やすための放流用種苗を大量に作る方法(「放流用種苗の大量生産」)に取り組んでいます。

 「産卵場造成技術開発」では、矢部川の上流域などで天然の産卵場の水深、水流、底質の状況を調べ、産卵場としての好適条件を明らかにしました。今後はこの知見をもとにより良い産卵場作りに役立てていきたいと考えています。

 次に「放流用種苗の大量生産」では、昨年の成果を踏まえ、水温管理を基本にプラスティックかご容器(長さ、幅、高さ48cm×28cm×7cm)に、産卵基質として径約1cm の砂利をつめた人工産卵床16基を用い、数十尾の親から1回に約10,000粒の卵を採ることができました。

 これらの卵を孵化させ、当研究所が開発した大量培養装置で培養したミジンコを初期餌料として37日間飼育した結果、生残率80%以上の好成績を収めることができました。また、成長も早い群では18日間で平均体長7.2mmから14.4mmと2倍の成長を記録しました。

 しかし、大量生産には採卵数はまだまだ不十分で、もっと多くの卵を採る必要があります。ハヤ1 尾の雌の抱卵数は約2,000 粒と少なく、しかも数回に分けて産卵するため、コイなどのように一度に大量の卵を得ることはかなり難しいと考えられますが、今後の課題として取り組んでゆきたいと考えています。

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矢部川支流の笠原川の産卵場

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孵化したばかりのハヤの仔魚

(内水面研究所)


福岡湾における海底耕うん効果調査

 今年度からセンターでは、福岡市環境局の委託をうけて、福岡湾の姪浜地先漁場において福岡市漁協の姪浜、伊崎、能古島支所の漁師さんと海底耕うん効果の調査を行っています。
 有機物、海中生物の遺骸などが底土に堆積し、底質が悪化した漁場を、耕うんにより改善できるかを検討することを目的としています。
 方法は、海底を掘り起こす爪を持った「けた網」とポンプで海水を吹きつける「ポンプけた網」を使い、漁場を耕うんする前と後で水質や底質、漁獲物に差があるかを比較します。
 現在まで3回の耕うん(8/27,10/7,12/3)を実施しましたが、底質の悪化の指標である硫化水素濃度(乾燥させ海底土砂に含まれる量)が減少することがわかりました(図1)。また、刺網による漁獲調査では、耕うん後はガザミ類やカレイ類などの漁獲対象種も確認されています。
 まだまだ調査途中ですので、現在までの調査結果だけではその効果や持続性等を十分には把握できてはいませんが、耕うんが底質改善に結びつくような方法を明らかにしていきます。

 

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図1硫化水素濃度の変化(8月27日調査結果)

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ポンプけた網による耕うん風景
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泥の採取作業

(研究部 海洋環境課・浅海増殖課)

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