なみなみ通信Vol.29

 

海況情報

 水温は、筑前海本では4月は平年並み、5〜6月は平年より低め、有明海では4・6月は平年より低め、5月は平年並み、豊前海では4・6月は平年より低め、5月は平年並みで推移しました。


グミの塩分処理技術開発

 グミは棘皮動物に属するナマコの仲間で、筑前海では、平成4年頃から沖合域で大発生し、駆除工事が行われていました。しかし、平成11年頃からは水深30m以浅の浅海域に発生するようになりました。最近では小型底びき網などに大量に入網し、グミの重量で揚網できない、漁網の中で魚が窒息死する、魚体が損傷を受けて品質が低下するなどの被害が出ています。このため、水産海洋技術センターではより効率的な駆除方法について研究を重ね、グミの塩分処理による駆除法を開発しました。この方法は小型底びき網で回収したグミを、船上で高塩分水(10〜13% 、通常:3%)に網ごと約10分間浸けた後、海中に散布するものです。
 処理したグミは回収した海域へ戻すため、コストがかかりません。また、処理したグミはマダイやカニなどの餌になることも確認しています。
 18年5〜6月に福岡湾や糸島地区で小型底びき網漁業者がこの方法を用いた駆除を実施しました。水産海洋技術センターではこの駆除方法による漁場回復状況や環境に与える影響調査に取り組んでいます。


グミ


回収されたグミ


塩分処理により内蔵が露出したグミ

(研究部 海洋環境課)


トラフグ右鰭切除放流魚の産卵回帰を確認!

   福岡県では毎年、全長約7cmのトラフグ稚魚に、右鰭を切除し、さらに頭部にある耳石の輪紋を染色する標識を施して放流を行っています。平成18年4月18日に糸島郡志摩町姫島の定置網で、右鰭に切除痕のある標識トララグが漁獲されました。全長49cm、体重2.7kgの雌で、卵巣重量511g、平均卵径1.14mm と十分に成熟していました。このトラフグの耳石標識から年齢は5歳で平成13年8月に全長83mmで福岡湾に放流したトラフグであることが確認されました。
  福岡県沿岸に放流されたトラフグは九州北部海域を中心に、富山県までの日本海及び韓国南西海域まで広く回遊することが知られていますが、今回のものは福岡湾で放流したトラフグが産卵直前に産卵場の姫島周辺まで回遊し、採捕されたのです。
  トラフグは放流魚の混獲率や回収率も高く放流効果の高い魚種ですが、今回の再捕で放流魚も親魚となって産卵場に回帰し多数の卵を産むことがわかりました。今後は放流魚の再生産効果についても調査研究を行っていきます。

 


産卵回帰した右鰭切除放流魚


右鰭切除痕


回帰魚の卵巣


耳石標識

研究部 漁業資源課)


知る人ぞ知る!玄界の荒海で育つ「博多もずく」

   フトモズクはモズクの仲間で、漁業者の間では「ソーメンノリ」や「ソーメンナ」などと呼ばれています(写真左)。筑前海の荒海で育ち、毎年4〜5月に収穫されます。県内の収穫量は年間数トン程度ですが、生産者価格は1kg あたり500〜1,500円と高値で取引されています。
 水産海洋技術センターでは、このフトモズクの養殖研究に取り組んでいます。良質な種網生産技術の開発やシケに耐える施設作り、養殖適地等の検討を重ねた結果、糸島郡志摩町芥屋福の浦地先において、昨年は250kg、今年は約1トンの収穫に成功しました。
 今後は,課題である「種網を大量に作る技術」を開発し,筑前海の新養殖品種として普及を図るとともに「博多もずく」としてブランド化を図っていきます。

 


>天然のフトモズク

 


陸上水槽で育てた種網(長さ約3o)

 

(研究部 応用技術課)


タイラギの殻の形とへい死原因

 現在、有明海で問題となっているタイラギ資源の減少は、主に「立枯れへい死」と呼ばれる大量へい死によって起こりますが、その原因は、貧酸素水塊の発生や底質の泥化、水質環境の悪化などが考えられ、多くの機関で研究に取り組んでいるものの、まだはっきりとした原因はわかっていません。
 有明海研究所の調査研究の中で、沖合潜水器漁場と干潟のタイラギでは殻の形が大きく異なることを明らかにしました。そして、へい死がみられる場所(潜水器漁場や一部の干潟)では、共通して殻が細長い傾向にあり、殻の形とへい死に何らかの関係があることが判明しました。また、過去の測定データと漁獲量の関係を調べると、殻が細長い時は漁獲量(資源量)が少なく、殻が幅広い時は漁獲量(資源量)が多くなる傾向がみられました。なぜ殻の形に差が出るのかはまだわかっていませんが、殻の形を変える要因とタイラギのへい死原因は、深く関係している可能性があり、今後も調査を進めていきます。

 


潜水器漁場と干潟でとれたタイラギの形

(有明海研究所 資源増殖課)


ステップアップしたヨシエビ放流技術

 

 豊前海では、昭和56年から毎年、ヨシエビの種苗放流を行っています。
 そのやり方は、種苗を船から直接漁場に放流していたため、海底に達する間に魚などに食べられる傾向がありました。そこで、ヨシエビ放流の効果を高めるため、豊前海研究所と漁業者が共同で新しい放流方法を開発しました。それは中間育成を終えたヨシエビを船から漁場に放流する際、魚類等の食害を防ぎ、海底まで無事送り届けるために、船上でヨシエビ種苗をカゴに入れて放流するというユニークな発想の方法です。2年間実施した結果では、海底に下ろされたカゴに入れられたエビは約1時間ほどで、海へとび出していくことが分かりました。
 標本船調査の結果から解析した豊前海のヨシエビの漁獲量は、平成16年・17年と好漁で、漁業者のヨシエビ栽培漁業への熱意はさらに高まっています。

 


ヨシエビ


研究所と漁業者が考案・作成した
放流カゴ


カゴを使った放流の様子

(豊前海研究所 漁業資源課)


小石原川の魚類調査を行っています

 内水面研究所では、県内の河川の環境や魚類の生息状況を定期的に調査しています。
 今年度は、地元以外からも訪れる人が多い「秋月」を流れ、地元朝倉地区のみならず福岡都市圏の水源として重要な小石原川での魚類の生息調査を実施しています。
 調査は年2回(5月と10月)で、5月23日に第一回目の調査を行い、10種類以上の魚が採捕され、10年ほど前に実施した調査と比べて種類は減っていませんでした。
 また、絶滅が危惧されているオヤニラミ(えらの後ろあたりに目のような模様があり”ヨツメ”とも呼ばれています)の生息も確認できました。
 さらに、このとき取れたハヤ(オイカワ)やゴリ(カワヨシノボリ)はいずれも、成熟した卵を持っていることから、小石原川で繁殖が行われているものと考えられます。
 河川や池の生物は身近にふれあえ、また、生息する環境の状態を知るバロメーターとして貴重な役割を果たしてくれます。今後とも内水面研究所では、河川や池などでの生物の生息状況や環境調査を通して漁場環境の保全にも努めていきます。

 


オヤニラミ

(内水面研究所)


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