なみなみ通信Vol.39

 

海況情報

 表層水温は、筑前海沖合域では10月〜12月はやや高め、筑前海沿岸域では10月は平年並み、11月はかなり高め、12月はやや高めでした。有明海では10月がかなり高め、11月、12月は平年並み、豊前海では10月、11月がやや高め、12月は平年並みでした。



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有明海のり養殖状況(1月上旬まで)

 今年度の採苗は、水温の降下状況と潮まわりから過去2番目に遅い10月17日から開始されました。育苗は概ね順調に行われ、冷凍網入庫は11月10日から、初摘採は11月15日から開始されました。しかし、壺状菌が11月10日、あかぐされ菌が11月17日にそれぞれ確認されたため、病害対策として、網の干出と少量ずつ短期間で摘採する管理を行いました。この結果、秋芽網は病害による品質低下はあったものの5〜6回の摘採を行うことができ、12月25日までに撤去されました。
 冷凍網は平年よりも1ヶ月近く遅い1月4日から張り込まれ、色のもどりも良く、14日から摘採が始まっています。冷凍網生産は、栄養塩の動向に大きく影響されるため、栄養塩が長く持続するかが今後の生産の鍵となります。
 共販は12月末までに3回行われましたが、単価の低迷により、年内生産の金額は昨年度、過去5年平均をともに下回る結果となりました。



捕獲されたナルトビエイ


(有明海研究所 のり養殖課)


サワラの漁獲動向について

 サワラは、筑前海区では、釣り、さし網、定置網など様々な漁業で漁獲される重要な魚種です。近年、夏から秋にかけて沿岸域で大きな群れを形成していることがよく見られるようになりました。
 福岡県のサワラ漁獲量(福岡県農林水産統計年報値)は、平成元年と10年に大きく増加傾向に転じ、現在も高い水準を維持しています。
 また、福岡市漁協における定置網のサワラ漁獲量と水産海洋技術センターで調査した漁獲前年までの3年間の平均水温との間に、統計的に有意な正の相関があり、近年の高水温傾向が漁獲量の増加に影響を与えている可能性が考えられました。



福岡魚市場に出荷されたサワラ



福岡県のサワラ漁獲量の推移
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定置網のサワラ漁獲量と平均水温
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(研究部 漁業資源課)


“豊前海一粒かき”の生産状況

 食の安心安全が求められる中、豊前海区カキ養殖研究会では、10月3日に福岡県京築保健福祉事務所から講師を招き、カキ衛生管理に関する講習会を実施し、消費者により安全な「豊前海一粒かき」を提供できるようカキ生産者の知識向上に努めました。
 さて、今年の漁もようですが、漁期当初はカキの成長は良好で、夏場の赤潮や貧酸素水塊の発生に伴うへい死は確認されず、順調に経過しました。
 しかしながら、水温が低下していよいよカキの身入りが増す10月を過ぎてからへい死が始まり、へい死率が60%を超えたイカダも一部にはみられました。へい死の発生原因の特定は困難ですが、1つにはシロボヤ等付着生物との餌料競合による活力の低下が考えられます。
 現在ではへい死は終息し、例年以上に「海のミルク」と呼ばれるグリコーゲンがたっぷり入った美味しい「豊前海一粒かき」が豊前海全域で収穫され、食べ頃を迎えています。



カキ成長の推移(むき身重量)
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衛生管理講習会の様子


(豊前海研究所 浅海増殖課)


モクズガニの放流及び中間育成試験

 モクズガニは福岡県では「山太郎ガニ」という名で親しまれており、市場に出荷されるだけでなく旅館や料理屋などにも直接取引され、単価も高く、秋の重要な漁業対象種です。しかし、漁獲量は年々減少しており、効果的な資源増殖策が求められています。
 そこで、小型種苗による増殖の基礎的な情報を得るため、甲幅2〜3mmのモクズガニ種苗を用いた河川での放流試験と研究所での中間育成試験に取り組んでいます。
 このようなごく小型の稚ガニは放流直後にカワムツなどの肉食性の魚種に食べられ、初期段階で数が大幅に減少することが報告されています。そこで、放流試験では食害生物が少ない、ごく小規模な河川で、食害生物から身を守るためにモクズガニを「人工付着藻」に付着させ、それをカゴに入れて沈め、稚ガニが徐々に河川に出て行くようにするなど、食害を防ぐ手法を試みました。
 12月上旬に筑後川支流の試験放流地点で放流翌日及び4日目に生残状況の確認を行ったところ、川底のれき下や川岸のミズゴケや枯れ枝が堆積した場所などで多く確認されました。今後、定期的に調査を行いながら、生残状況を確認していく予定です。
 中間育成試験は500Lの農業用ローリータンク6基に、稚ガニのシェルター(かくれが)として、各々サランロック(アユ卵の付着基質、厚く敷いたものと薄く敷いたものの2種類)、キンラン、アコヤガイ殻、ビニールハウス用シート、杉の枝の6種類の基質を用意し、4,000尾づつを収容して試験を行っています。餌料には、緑藻類(アオミドロなど)の他、ダイコン、ハクサイ、キャベツなどの野菜類と魚用の配合餌料(動物性の餌)を与えています。今回の中間育成試験で得られる種苗は、今後の標識放流試験の種苗として使用することを計画しています。



直接放流(左上方の写真は稚ガニ)



カゴを利用した放流

放 流



中間育成基質



中間育成状況


(内水面海研究所)


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