なみなみ通信Vol.43


 

海況情報(10月〜12月)

 表層水温は、筑前海沖合域では10月はかなり高く、11月はやや高めで推移しましたが、12月は平年並みになりました。
筑前海沿岸域では10月、11月はやや高めでしたが、12月は平年並みでした。
有明海では10月、11月は平年並みでしたが、12月はやや高めで推移しました。
豊前海は期間を通じて平年並みでした。



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有明海のり養殖状況(12月末まで)

 今年度の採苗は、水温の降下状況と潮まわりから、昨年より2日遅い10月19日(平成19年度の10月27日に次いで過去2番目に遅い)から始まりました。育苗期は雨や曇りの日が多く日照が不足したため、冷凍網入庫は11月14日から、初摘採は11月21日からとそれぞれ昨年より4日程遅れて始まりました。
 病害については、壺状菌病が11月16日に、またあかぐされ菌病が11月19日にそれぞれ確認されました。
 壺状菌病は昨年度の様に大きな被害とはなりませんでしたが、あかぐされ病は天候不順が続いたことからノリ網の干出が十分ではなかったため、病勢は衰えず秋芽網生産終盤まで感染が途切れない状況でした。今年度の秋芽網生産は、病害による品質低下は見られたものの4〜6回の摘採を行い、12月20日の一斉撤去で終了しました。
 冷凍網は12月26日から張り込まれ、色のもどりも良く、正月明けから早速摘採が始まるものと思います。冷凍網生産は、栄養塩量に大きく影響されるため、栄養塩が長く持続するかが今後の生産の鍵となります。
 共販は12月末までに3回行われましたが、単価は昨年を上回ったものの、生産枚数が少なかったことから、年内生産の金額は昨年度、過去5年平均ともに下回る結果となりました。

(有明海研究所 のり養殖課)


アコヤガイ採苗試験情報

 粕屋郡新宮相島では、天然のアコヤガイ稚貝を採苗し、それを母貝として真珠養殖が行われています。
 相島産アコヤガイは、純国産種でありながら、成長が早くて大型化することから真珠母貝として最適であることが確認されています。
 天然貝を母貝として用いるメリットは、高品質の真珠を高い割合で生産ができることにあり、ここ相島における真珠養殖においては、天然稚貝をいかに効率的に採苗するかが極めて重要なポイントになっています。
 天然稚貝の採苗は、相島においても杉葉を海中に吊して浮遊幼生を付着させる一般的な方法で行われています。しかし、杉葉を付着基質として用いた採苗では、付着基質自体(杉葉)が腐食するため、稚貝選別等の管理に多大な労力を要します。また、相島の周辺海域は外海性であるため、国内での主養殖産地のような内湾での真珠養殖とは環境的に大きく異なります。
 そこで、水産海洋技術センターでは、天然稚貝の効率的な大量採苗を目標として、現在、杉葉に代わる新たな付着基質の開発に取り組んでいます。
 これまでに、波板やノリ網及び人工芝など、様々な材質、形状、色の付着基質で採苗試験を行い、徐々にではありますがアコヤガイの稚貝が好む基質が分かってきました。
 今後も試験を継続し、相島に適した採苗手法の確立を目指していきたいと考えています。


海中に吊した各種付着基質

ノリ網に付着した稚貝
 
杉葉に付着した稚貝
(研究部 浅海増殖課)

平成21年度「豊前海一粒かき」の生産状況

 本年の状況は、高水温期の夏場における赤潮や貧酸素水塊の発生に伴う大量へい死もなく、また秋季の台風接岸もなかったことから概ね順調といえます。
 本海区の主漁場である人工島(北九州空港)周辺漁場における成育状況をみますと、8月までは成長、歩留りとも例年になく非常に順調でしたが、秋季に入った9月から10月にかけて生残率が急激に低下して成長の鈍化も認められました。しかし、出荷直前の11月時点では生残率、成長ともほぼ平年並みに落ち着き、身入りは平年より良好となっています。  
 また、10月3日には、消費者により安全で美味しい「豊前海一粒かき」を供給することを目的に、北九州市保健所から講師を招いてカキ衛生に関する講習会を開催し、カキ生産者の知識向上に努めました。
 現在では、豊前海全域で海のミルクといわれるグリコーゲンをたっぷり含んだ美味しい「豊前海一粒かき」が収穫され、出荷されています。
 なお、出荷は来年の3月頃まで続く予定です。

カキの衛生管理に係る講習会の様子
(豊前海研究所 浅海増殖課)

陸封アユの生態調査について

 アユは、福岡県では内水面漁業対象種として非常に重要な魚ですが、近年、海から遡上して来る天然アユは減少傾向にあり、漁業者は種苗放流などその増殖に努めています。
 本来、アユは秋の産卵期を迎えると、成育場から下流域の産卵場まで降河し、下流域の転石等に産卵します。ふ化仔魚は、さらに海まで下り、沿岸で成長して、春、水温が温むと河川に遡上して成長します。しかし一方で、有名な琵琶湖のアユ(通称、「湖産アユ」)に代表されるように、琵琶湖を海の代わりとして再生産する”陸封アユ”の存在が知られています。
 福岡県でも小石原川の寺内ダム湖(美奈木湖)に陸封アユが生息していますが、漁業での有効利用や増殖を図るうえで、いつ頃どこで卵を産んで、どのように成長するのかなど、その生態がよく分かっていないため、現在は主として産卵や成長などの生態調査を進めているところです。
 産卵については、今年も昨年と同様10月中旬頃から確認されました。今までの調査結果からダム湖の水位によって産卵場として使われる”瀬”が異なることや、ダム湖の流れ込みの直上の瀬が最も多く利用されており、その上流の”瀬”(流れ込みから数えて2番目の”瀬”)より上では極端に少ないことなどが分かりました。
 このような知見を基に、来年度以降は、人工産卵場の造成などの試験にも取り組む予定です。
 今後、近年減少している天然アユ資源を補うものとして、種苗放流とともにこの陸封アユを積極的に活用するため、各種の調査結果を総合してその有効活用や増殖法を検討して行きたいと考えています。

産卵が確認された”瀬”

河床に生み付けられたアユの卵
 (内水面海研究所)

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